限界削減費用とは、温室効果ガス(GHG)を1トン削減するのに必要な追加費用を指す。この概念は、炭素税やカーボンプライシング等の政策立案において、また企業が削減策を決定する際の重要な指標として広く活用されている。ただし、限界削減費用の推計結果は、使用する手法や前提条件によって大きく変動するため、結果の解釈や利用には、その推計方法と前提条件を明確にすることが不可欠である。
エキスパートベースの推計方法
推計方法は、算出目的に応じて設計する必要がある。よく採用される手法の一つが、エキスパートベースの推計方法である。この方法では、専門家が各削減技術に関わる費用を試算し、それに基づいて限界削減費用を算出する。具体的には、排出量を削減する新規技術とそれに代替される既存技術の設備投資費用や維持費用等の差額に加え、省エネによって軽減されるエネルギー費用を差し引いて算出される。
本手法の利点は、GHG削減目標達成のための具体的な対策が明確になり、企業のGX(グリーントランスフォーメーション)推進ロードマップ作成に有用なことである。例えば、削減費用1万円/t-CO2の「技術A」で、自社の排出量10%削減が達成できるが、さらに1%削減するには、費用2万円/t-CO2の「技術B」が必要になる。また、省エネ効果が高い技術では、長期的な運用によるエネルギー費用の節約が初期投資額を上回り、結果として「マイナスの削減費用」となる場合もある。
このアプローチにより、企業は費用対効果を考慮しながら、以下のような限界削減費用曲線を作成し、段階的な削減戦略を立案することが可能になる。
※株式会社テックシンカーは、企業の脱炭素化推進や削減策のロードマップ作成を支援しております。
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