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ボランタリーカーボンクレジットの活用について

Voluntary Carbon Credits、ボランタリーカーボンクレジット

1.カーボンクレジットの位置づけ

温室効果ガス排出削減量をクレジットとして売買できるカーボンクレジット制度の活用は、企業や自治体だけでなく、一般市民や消費者も商品の購入やイベントへの参加等を通じて自らの意思で積極的に参加することができ、社会全体で脱炭素に取り組むことが可能な仕組みとして認識されている。ボランタリーカーボンクレジットは、民間団体等が発行するものであり、自主的な温室効果ガス排出削減の目標達成に用いられているカーボンクレジットを指す。

 

2.グローバルの動向

世界では、近年のカーボンクレジットへの関心の急速な高まりを背景に、ボランタリーカーボンクレジット市場の拡大のために様々な取り組みが行われており、各企業の自主的な取り組みが注目されている。一部の企業は脱炭素に向けた目標の実現の為、自社で定めたガイドラインに基づき、カーボンクレジットの購入を実施している。これにより、カーボンオフセットを行なっていない企業と比較して排出削減のペースが二倍であるという分析結果も報告されており、脱炭素への貢献を行うための重要なアプローチとなっている。カーボンクレジットのさらなる活用において、クレジットの利用先の明確化、方法論の理解、品質評価の支援、主張の透明性、マーケットの単純化などが課題となっている。

 

3.自主的利用に関するベストプラクティス

・関連する排出量の頑健かつ包括的な定量化

ISO、GHG プロトコル、SBTi のような公認の基準に沿って、いわゆるスコープ 1、2、3 の排出量を定量化すること、関連する排出量を公認の基準に沿って定量化すること、そして有能な第三者によって計算が検証される。

・1.5 度目標に沿った自社排出量削減

SBTiのような認知されたガイダンス、基準、ツールを適用することを必要とする。

・高品質カーボンクレジットの自主的利用

ベストプラクティスでは、適応と世界全体の排出量削減への貢献に関連するカーボンクレジットの利用を奨励している。特に CCQI(Carbon Credit Quality Initiative) と ICVCM(Integrity Council for the Voluntary Carbon Market) の炭素原則の草案、およびパリ協定の第 6 条と一致することである。

・排出・緩和活動・クレジット利用の報告

利害関係者がベストプラクティス基準に照らして評価できるように、関連情報を十分に詳細に公表。少なくとも直接・間接排出量、緩和目標・経路・計画、毎年の排出量の変化、目標・経路に対する行動と進捗状況、カーボンクレジットの自発的使用等。

・主張の完全性の確保

炭素クレジットの使用について、「国別緩和貢献」、「オフセット」、「地球規模排出量における全体の緩和」を差別化して主張すること。


4.情報開示基準

企業は、カーボンクレジットの利用計画を提示する際に、次の項目の開示が求められる。

1)GHG排出量削減の目標達成がクレジットに依存している割合

2)カーボンクレジットが認証されているスキーム

3)カーボンクレジットの種類(自然由来または技術由来、削減または除去)

4)カーボンクレジットの信頼性と完全性を理解するために必要な要素

 

5.今後の市場拡大に向けた望ましい取り組み

ボランタリークレジットを活用した温室効果ガス排出の削減と吸収効果は、パリ協定の第6条においても認められており、その必要性は今後も高まっていくことが想定されている。ボランタリークレジットの活用を通じて、国際的なステークホルダーへの高い期待と提言が可能であり、日本企業が戦略的に活用することで世界におけるカーボンクレジット市場での存在感を増し、国際競争力の強化に繋げられると考えられる。日本主導の仕組みの構築を進め、排出困難なセクターにおける重要な排出削減手段として、今後のマーケットの拡大の可能性が期待される。


国内でのルールの構築と脱炭素への取り組みを促進していく上で、次の項目の検討が有効であると考えられる。

①日本の実態と国際的な議論を踏まえた自主的なカーボンクレジットの活用の後押し・評価の仕組みや評価制度

②カーボンクレジット創出を促すための資金支援・保証の仕組み

③官民の連携と情報共有、取り組みの検討が行える場

 

カーボンクレジットは、企業の気候変動戦略だけでなく環境配慮型の商品・サービスのオフセットにも活用されていることから、消費者による直接のクレジット活用として需要を生み出し、更なるクレジットの活用の拡大に資する。カーボンクレジットの透明性や信憑性を証明していく上では、活用するクレジット自体の属性等の情報開示、及び企業として活用に関する考え方の開示が重要とされる。

 

出典:【GXL】ボランタリーカーボンクレジット情報開示検討WG 最終報告書を基に弊社作成

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